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笠井潔:『吸血鬼と精神分析』(光文社) [book]

吸血鬼と精神分析

吸血鬼と精神分析

矢吹駆シリーズは当初からの読者だ。第一作である『 バイバイ、エンジェル 』が刊行されたのが1979年、『 サマー・アポカリプス 』が1981年だから、すでに四半世紀を越えるシリーズということになる。『サマー~』は刊行直後に読んだので、そのころの当方の年齢は13歳。中学一年生じゃないか。

そのころの作品中ではずっと年上だったカケルやナディアも、今現在の当方からするとはるかに年下。作中時間も『バイバイ~』から2年ほどしか経過していない。思えば不思議なものである。

著者は当方とちょうど20歳違いの1948年生まれ。全10作になると構想されている矢吹駆シリーズは、果たして完結するのだろうか。そして、あのニコライ・イリイチとの決着をみることができるのだろうか。


内容(「BOOKデータベースより)
パリ市東部に位置するヴァンセンヌの森で女性の焼屍体が発見された。奇妙なことに、その躰からはすべての血が抜かれていた。続いて、第二、第三の殺人が起こり、世間では「吸血鬼」事件として注目される。一方、体調不良に悩まされていた女子大生ナディアは友人の勧めで精神医のもとを訪れる。そこでタチアナという女性に遭遇し、奇妙な依頼を受ける。各々の出来事が、一つの線としてつながったときに見えてくる真実とは…。ナディアの友人である日本人青年が連続殺人の謎に挑む。本格探偵小説「矢吹駆」シリーズ第6作。

そして、前作である『 オイディプス症候群 』からさえもすでに10年近く待った本書。シリーズの各作品の内容はほとんど忘れてしまったが、矢吹駆をはじめとして、ナディア・モガールとその父のモガール警視、そしてジャン・ポール・バルベス警部と再会できたことがやはりいちばんうれしい。

さて、肝心の本書のデキだが、期待通りというわけにはいかなかったというのが本音。作中でも言及されているが「パリ市民のすべてが容疑者であるような」ミステリをサスペンスフルにするということは実はものすごくむずかしいと思う。実際、同シリーズ三作目の『 薔薇の女 』もシリーズ中では水準は低いし、他の作家のものでも成功事例は少ないように思う。

余談だが、不特定多数から真犯人Xを探し出すという物語の最高の成功例は岡嶋二人の『 眠れぬ夜の報復  』と思っている。未読の方はぜひ読んで欲しい。ものすごいんですから。

閑話休題。そして、本作でもう一つ惜しいのは、本シリーズの特徴であるカケルと登場人物たちの思想的対立と描かれる連続殺人との結びつきが弱いように感じられたこと。そのあたりは『サマー・アポカリプス』で頂点に達してしまったのかもしれない。

それでもね、今どきの薄味のミステリに比べれば歯ごたえは十分だし、カケルとその宿敵との関係が少しづつでもあきらかになってきたという愉しさがある。キマイラ孔シリーズとならんで完結を期待する本シリーズ、ぜひ当方が生きているあいだに結末を読ませて欲しいものです。


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