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2012年02月の読書メーター [a day in the life]

2月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5523ページ
ナイス数:0ナイス

ニッポン貧困最前線―ケースワーカーと呼ばれる人々 (文春文庫)ニッポン貧困最前線―ケースワーカーと呼ばれる人々 (文春文庫)
読了日:02月29日 著者:久田 恵
リストラなう!リストラなう!
読了日:02月27日 著者:綿貫 智人
見えない復讐見えない復讐
読了日:02月25日 著者:石持 浅海
ソリトンの悪魔(上)ー日本推理作家協会賞受賞作全集(84) (双葉文庫) (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)ソリトンの悪魔(上)ー日本推理作家協会賞受賞作全集(84) (双葉文庫) (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)
読了日:02月24日 著者:梅原 克文
ドルチェドルチェ
読了日:02月19日 著者:誉田 哲也
ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)
読了日:02月18日 著者:橋爪 大三郎,大澤 真幸
吸血鬼と精神分析吸血鬼と精神分析
読了日:02月17日 著者:笠井潔
小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ
読了日:02月14日 著者:平川克美
お金が貯まる5つの習慣―節約・投資・教育・計算そして感謝 (幻冬舎新書)お金が貯まる5つの習慣―節約・投資・教育・計算そして感謝 (幻冬舎新書)
読了日:02月13日 著者:平林 亮子
年収100万円の豊かな節約生活年収100万円の豊かな節約生活
読了日:02月12日 著者:山崎 寿人
ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変えるゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える
読了日:02月12日 著者:井上 明人
殺しの時間-乱視読者のミステリ散歩殺しの時間-乱視読者のミステリ散歩
読了日:02月08日 著者:若島 正
奇跡なす者たち (未来の文学)奇跡なす者たち (未来の文学)
読了日:02月08日 著者:ジャック・ヴァンス
呪いの時代呪いの時代
読了日:02月07日 著者:内田 樹
計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話
読了日:02月02日 著者:三島邦弘
その「正義」があぶない。その「正義」があぶない。
読了日:02月02日 著者:小田嶋隆

2012年2月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター
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久田恵:『ニッポン貧困最前線』(文藝春秋) [ebook]

「生活保護」をGoogleニュースで検索すると、その総額の増加、不正受給問題、そして生活保護を受けることなく亡くなった方の悲報などの検索結果が出てくる。

一方で、「働かざるもの喰うべからず」という考え方や、生活保護にフリーライドしているのではないかというある種の怨嗟がネット上では渦巻いているように思う。そんな状況を理解するために本書を手に取ったのだった。


内容(「BOOK」データベースより
政府の締めつけとマスコミによる福祉たたきの狭間で、貧困層と直接向き合ってきたケースワーカーたち。福祉事務所で働く彼らの悩み、怒り、喜びを通して、過剰な期待と誤解を受けてきた生活保護制度の実情を明らかにする。未曾有の発展をとげた戦後日本の「見えない貧困」を描き出した衝撃のルポルタージュ。

第一部は何人かのケースワーカーの群像とその仕事の内容について描くもの、第二部は「札幌・女性餓死事件」についての著者のルポルタージュ、そして第三部は北九州の地方都市の受給率の高さの経緯について記述したもの。

印象深いのは、ケースワーカーという職種で、一般に公務員という仕事に抱くイメージとは異なるものだということだった。特に精神的なきつさと、それをおしても職務遂行する人々には頭が下がるものがある。本書の単行本は1994年に刊行されているから、それ以降の社会・経済環境の激しい変化は、より彼らの職務を困難なものにしているにちがいない。

ここ数ヶ月の中でも、餓死事件の報道は相次いでいて、例によって「生活保護の相談に行ったが」というような言葉が枕詞のように付言されている。平たく言ってしまえば、「行政に落ち度はなかったのか」ということを言いたいんだろう。でも、行政を叩くことによって得られるメリットはなんだろうか。福祉行政のモチベーションを下げるだけじゃないのか、とそんなことを思わせる。

また、第三部で描かれる石炭から石油資源への移行に伴い、仕事を失ってしまった鉱夫たちが生活保護に縋ったという事実には考えさせられる。努力して仕事を見つければいいじゃないか、という声ももっともだし、保護に頼りっぱなしの依存体質ができてしまったということも事実だ。

しかしながら、地域の経済問題や教育水準から容易に就労機会がつくれないということもあるだろう。極端な話、当方だっていつそういった状況に追い込まれるかわからないのだから。ひとつ言えそうなのは、保護を受ける方の多くが、家族であるとか地域であるとかのコミュニティから分断されてしまったということだろう。 孤独であることが最大のリスクである時代なのだな。


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幸村誠:『プラネテス』(講談社) [ebook]

この季節は出かけるのが億劫になるので、土曜日は休養も兼ね一日部屋でのんびりすることが多い。洗濯や掃除を済ませてコーヒーを飲んでいると、そういえばeBookJapanで購入した本作をまだ読んでいなかったことに気づく。

SONYのタブレット端末でダウンロード状況をあらわすプログレスバーが伸長していくのを見ると、デジタルデバイスの液晶画面でコミックを読むようになるなんて、いつのまにか未来に生きているんだな、と不思議な感慨に襲われる。

そのくせ、煎餅布団に寝ていたり相変わらず朝食はチーズトーストと目玉焼きだったりするところは昭和のころの少年時代(当方にも少年時代はあったのだ!)と変わらない。劇的には変化しない。未来は少しずつ・いつのまにか変わっていくということなんだな、と思う。


出版社/著者からの内容紹介
SFニュースタンダード登場!!
400万年を経て人は地上より飛び立った
この宙(そら)は人の強さを試す

と、惹句にあるようなSFっぽさを期待すると少し違うと思う。宇宙空間を舞台にした人間ドラマ、あるいはビルドゥングス・ロマンといった風情か。いちばん最初のエピソードで、一話完結タイプの人情話かと思いきや、途中から作者のイマジネーションが膨らんだろうな。

したがって、全四巻のマンガという構成にしてはバランスが悪い。あきらかに破綻していると思うぞ。そもそもが、2ちゃんまとめサイトで「5巻ぐらいで完結するおもしろいマンガはないか」というエントリで発見したものだけど、これは完結しているのか、と思わせるくらいのもの。

でもね、なぜかそれが不快ではないのだ。それは、作者のスタンスが、いろいろひっくるめて人間っていいもんじゃないか、と言っているように思えるから。人間のいろいろな感情がぶっこまれていて、読むものはそこに自分と同じような想いがみつけられるにちがいない。作中で引用されている宮沢賢治の詩が読みたくなる、そんな作品だった。


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『TIME/タイム』 [movie]

原題: In Time
製作国: 2011年アメリカ映画
配給: 20世紀フォックス映画
上映時間: 109分
キャスト: ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライド、キリアン・マーフィ、ビンセント・カーシーザー、オリビア・ワイルド、アレックス・ペティファー、ジョニー・ガレッキ、マット・ボーマー
監督: アンドリュー・ニコル


ストーリー(あらすじ)
科学技術の進歩によりすべての人間の成長が25歳で止まり、そこから先は左腕に埋め込まれた体内時計が示す余命時間だけ生きることができる近未来。貧困層には余命時間が少ない一方で、富裕層は永遠にも近い時間を手にする格差社会が生まれていた。ある日、ひとりの男から100年の時間を譲り受けた貧困層の青年ウィルは、その時間を使って富裕層が暮らす地域に潜入。大富豪の娘シルビアと出会い、時間監視局員(タイムキーパー)の追跡を受けながらも、時間に支配された世界の謎に迫っていく。

それほど期待値を高く持たずに鑑賞に出かけたところ、それを下回るデキであったといわざるをえない。そもそも主人公が男から譲り受けた100年の時間をどのように使うか、というのがひとつの見所なのだが、富裕層エリアに赴いて高級ホテルに泊まったり豪華な食事を摂りはじめるところでずっこけてしまった。

その後、カジノで大富豪と知り合い、その娘のシルビア(アマンダ・セイフライド)とめぐり合うのだが、割と簡単にくっついてしまう。109分という短尺だから脚本が急ぎすぎという感じだ。貧困エリアで時間を奪うギャング集団も、なんだかただの街のチンピラみたいだし。

そもそもが、本作で描かれる「時間」は作中でも言っているように「貨幣」と同じものであり、米国における新自由主義の結果である富の偏在に対するアナロジーであるのだが、それがあからさまでありすぎるためハナにつくのだ。エリアごとに階層が分かれていることも、富裕層がかたまってボディガードをつけ要塞のような区域で暮らす現代米国社会の状況を皮肉っているのだろう。

でもね、それをSFというジャンルを借りてやられてもインパクトは小さいし陳腐化していると思うぞ。どうせやるんだったら、 薬を服用し続けなければ、体内から“胃”が逃げ出してしまうという階層社会くらいのことをやってほしいものだ。細かいところでいえば、富裕層は「走らない」(貧困層は時間に追われているので走る)などのアイデアがおもしろかったりするのだが。

個人的にはオリビア・ワイルドが舞台から早々に姿を消すところが気に食わないが、キリアン・マーフィがあいかわらずニューロティックな雰囲気でよかったというところくらいが観どころか。


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石持浅海:『見えない復讐』(角川書店) [book]

見えない復讐

見えない復讐

そもそも著者の作品を読み始めたのは偶然の産物で、職場の同期(♀)が『 賢者の贈り物 』を読んでいて、「ふーん」といった感じで当方も購入し読んでみたからだった。以来、近年ではもっとも好きな作家となったのだが、もっと驚いたのは配偶者が読んでいたこと。『 水の迷宮 』は配偶者から借りたものだ。

そんなわけで、著者の作品で未読のものは『 顔のない敵 』,『 人柱はミイラと出会う 』,『 リスの窒息 』の三冊となった。石持浅海成分が乏しくなったら読むことにしよう。


内容(「BOOKデータベースより)
エンジェル投資家・小池規彦の前に現れた大学院生・田島祐也。仲間と三人でベンチャー企業を起ち上げたばかりの田島は小池に出資を求めに来たのだ。やがて小池は田島の謎めいた行動から、彼が母校・東京産業大学に対しての復讐心を抱いていることを見抜く。実は小池も田島と同じく大学への恨みを抱えたまま生きていたのだ―。

さて、本書は『 攪乱者 』や『 この国。 』と同系統の、著者のダークゾーンを垣間見られる作品。もちろん、著者の作品は徹頭徹尾ダークゾーンにあるじゃないか、という突っ込みは聞かないふりをしておく。

そもそも法人に復讐を、だとか、その復讐のために企業を起業するなどというどこかねじくれた論理が一般的な読者には合わないと思う。一方で、著者の作品を好む人間は、その論理がおもしろいと思うのだからしょうがないのだ。

本書はまた、前述の二作と同様に連作短編集の結構をとっているが、おそらくは著者が構想していた結末とはずれた方向に結末が行ったものと感じられる。あくまで勘ではあるし根拠はないのだが。そこがまた不思議な魅力になっているのが特徴の作品である。


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梅原克文:『ソリトンの悪魔(上・下)』(双葉社) [book]


当方が鑑賞した映画のオールタイムベストを選ぶとしたら、ベストテン圏内に、どういうわけかジェームズ・キャメロン監督/エド・ハリス主演『 アビス 』がランクインしてしまう。ご覧になった方はご存知のとおり、決してデキの良い映画とはいえない。公開時に映画館で鑑賞した当方は、なんだか竜頭蛇尾な脚本だな、と思ったのを覚えている。

ところがね、その後もなぜか<完全版>を再度劇場に鑑賞しに行ったり、TV放映時も視聴したり、結局はDVDも購入し2,3回は観ているのだから、やはり気に入っているとしか言いようがない。特に、エド・ハリス演ずる主人公が結婚指輪をトイレに投げ捨てたものの、思い直して拾い上げるシーンは、映画史に残る伏線なのではなかろうか(大袈裟)。


内容(「BOOK」データベースより)
日本最西端に位置する与那国島の沖合に建設中の“オーシャンテクノポリス”。その脚柱が謎の波動生物の攻撃を受け、巨大海上情報都市は完成目前で破壊されてしまった。とてつもない衝撃は、近くの海底油田採掘基地“うみがめ200”にも危機的状況をもたらす。オイルマンの倉瀬厚志は基地を、そして遭難した娘を救出するため、死力を尽くすが…。

ひさしぶりにエンタテインメントに徹した小説を読んだという感慨がある。物語に没入してしまうのだ。それぐらい優れた娯楽小説といえる。何しろ展開が速い。梗概にある海上都市が謎の物体に破壊されるのが上巻の序盤、そこから主人公をはじめとする登場人物たちはラストまで冒険の連続となる。

とにもかくにも緊張の糸を切らせない。序盤のハイテンションがラストまでほぼ継続するので、読んでいるほうも疲れてしまうくらいだ。当然のことながらハリウッド映画を彷彿とさせるのだが、そんなものよりはるかにアイデアが盛り込まれていて、歯応えがある。まさにノンストップ。

本書は1995年に朝日ソノラマから出版されたもので、10年以上も前に書かれていながら古びていないこともすばらしい。時代背景は2016年だが当時の近未来を描く手腕は相当なもの。特にテクノロジの描写は、たとえば『 マイノリティ・リポート 』の映像を先取りしていると感じられる。Windows95が発売される前後でのこのイマジネーションには感嘆した。

惜しむらくは登場人物たちがいまひとつ魅力に欠けること。潜水艦の艦長など、もう少しかっこよく描いてあげれば作品全体の爽快感が増したのに、と思ってしまう。おそらく著者の意図はヒーローの活躍を描くことではなく、市井の普通の人々が極限状況に巻き込まれたらどうなるのか、というものだったろうから、これはこれでいいのかもしれないが。

日本推理作家協会賞受賞作品だから、読んでいる方も多かろうと思うが、もし未読の方がいて、ジャンルクロスオーヴァ・ノベルにアレルギーがなかったらぜひともお奨めしたい一冊(上下巻だけど)。

ところで、蛇足があるのだが、作品内容に踏み入るので以下は既読の方だけお読みになるが吉です。

続きを読む


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誉田哲也:『ドルチェ』(新潮社) [book]

ドルチェ

ドルチェ


内容(「BOOKデータベースより)
彼女が捜査一課に戻らない理由。それは、人が殺されて始まる捜査より、誰かが死ぬ前の事件に係わりたいから。誰かが生きていてくれることが喜びだから。警視庁本部への復帰の誘いを断り続け、所轄を渡って十年が過ぎた。組織内でも人生でも、なぜか少しだけ脇道を歩いてしまう女刑事・魚住久江が主人公の全6編。

なんと著者は初読。「ジウ」シリーズや『ストロベリーナイト』は購入したものの、例によってほっぽらかし状態。本書は装丁写真が気に入ったから購入。いわゆるジャケ買いですね。

さて、読了して感じたのは「軽いな」というもの。梗概にある女性刑事の人間像の奥行きから事件の内容に至るまで、重くなりそうな題材を敢えて軽くしているような感じ。うん、有体に言っちまえば、TVの二時間ドラマのプロットと人物造形だ。

もちろん、こうして読み切っているくらいだから、つまらないということはない。特に最終話の「愛したのが百年目」は人間の心の不思議さを浮かび上がらせる佳品だ。


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『50/50 フィフティ・フィフティ』 [movie]

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原題: 50/50
製作国: 2011年アメリカ映画
配給: アスミック・エース
キャスト: ジョセフ・ゴードン=レビット、セス・ローゲン、アナ・ケンドリック、ブライス・ダラス・ハワード、アンジェリカ・ヒューストン、マット・フルーワー、フィリップ・ベイカー・ホール
監督: ジョナサン・レビン


ストーリー(あらすじ)
酒もタバコもやらない普通の青年アダムは27歳でガンを患い、生存率50%と宣告される。同僚や恋人、家族は病気を気づかってどこかよそよそしくなっていくなか、悪友カイルだけはガンをネタにナンパに連れ出すなど、いつも通りに接してくれていた。アダムはなんとかガンを笑い飛ばそうと日々を過ごしていくが…。

うーむ、とても評価がむずかしい映画という感じだ。エンタテインメントというわけではなく、かといって題材どおりのシリアスドラマかというとそんなこともない。雰囲気自体はコメディ寄りに振られていて、そこに好感が持てる。

出演しているセス・ローガンが、脚本を書いている友人とのあいだで実際に起こったことを映画化している作品。もっと泣かせ系・感動系にもできたはずが、難病をコメデイでアプローチしたということだ。とはいっても、大爆笑ということではなくゆったりとしたものに仕上がっている。

そこに心地よさがあるかというと実はそういうことでもなく、作品世界に没入できるということもない。そこには、ジョセフ・ゴードン=レヴィット演ずるアダムのある種の意固地さが投影されていると感じた。こういった少し孤独でおとなしめの青年役をやらせるとすばらしい役者だ。

セス・ローゲンは、『 グリーン・ホーネット 』にはまったく感心しなかったが、本作では主人公の友人役を抑え目に好演している。ブライス・ダラス・ハワードは、ウェイトコントロールが功を奏しw嘗ての容貌を取り戻していたのがうれしい。アナ・ケンドリックも新米セラピスト役がはまっていると感じた。

派手さはないし、コメデイ寄りといっても大笑いするところもなく、総じて平板な印象の作品ながら、なんとなく観てよかったなと思える不思議な作品。あまり人にはお奨めしませんけどもね。


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笠井潔:『吸血鬼と精神分析』(光文社) [book]

吸血鬼と精神分析

吸血鬼と精神分析

矢吹駆シリーズは当初からの読者だ。第一作である『 バイバイ、エンジェル 』が刊行されたのが1979年、『 サマー・アポカリプス 』が1981年だから、すでに四半世紀を越えるシリーズということになる。『サマー~』は刊行直後に読んだので、そのころの当方の年齢は13歳。中学一年生じゃないか。

そのころの作品中ではずっと年上だったカケルやナディアも、今現在の当方からするとはるかに年下。作中時間も『バイバイ~』から2年ほどしか経過していない。思えば不思議なものである。

著者は当方とちょうど20歳違いの1948年生まれ。全10作になると構想されている矢吹駆シリーズは、果たして完結するのだろうか。そして、あのニコライ・イリイチとの決着をみることができるのだろうか。


内容(「BOOKデータベースより)
パリ市東部に位置するヴァンセンヌの森で女性の焼屍体が発見された。奇妙なことに、その躰からはすべての血が抜かれていた。続いて、第二、第三の殺人が起こり、世間では「吸血鬼」事件として注目される。一方、体調不良に悩まされていた女子大生ナディアは友人の勧めで精神医のもとを訪れる。そこでタチアナという女性に遭遇し、奇妙な依頼を受ける。各々の出来事が、一つの線としてつながったときに見えてくる真実とは…。ナディアの友人である日本人青年が連続殺人の謎に挑む。本格探偵小説「矢吹駆」シリーズ第6作。

そして、前作である『 オイディプス症候群 』からさえもすでに10年近く待った本書。シリーズの各作品の内容はほとんど忘れてしまったが、矢吹駆をはじめとして、ナディア・モガールとその父のモガール警視、そしてジャン・ポール・バルベス警部と再会できたことがやはりいちばんうれしい。

さて、肝心の本書のデキだが、期待通りというわけにはいかなかったというのが本音。作中でも言及されているが「パリ市民のすべてが容疑者であるような」ミステリをサスペンスフルにするということは実はものすごくむずかしいと思う。実際、同シリーズ三作目の『 薔薇の女 』もシリーズ中では水準は低いし、他の作家のものでも成功事例は少ないように思う。

余談だが、不特定多数から真犯人Xを探し出すという物語の最高の成功例は岡嶋二人の『 眠れぬ夜の報復  』と思っている。未読の方はぜひ読んで欲しい。ものすごいんですから。

閑話休題。そして、本作でもう一つ惜しいのは、本シリーズの特徴であるカケルと登場人物たちの思想的対立と描かれる連続殺人との結びつきが弱いように感じられたこと。そのあたりは『サマー・アポカリプス』で頂点に達してしまったのかもしれない。

それでもね、今どきの薄味のミステリに比べれば歯ごたえは十分だし、カケルとその宿敵との関係が少しづつでもあきらかになってきたという愉しさがある。キマイラ孔シリーズとならんで完結を期待する本シリーズ、ぜひ当方が生きているあいだに結末を読ませて欲しいものです。


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平川克美:『小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』(ミシマ社) [book]

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ


内容(「BOOKデータベースより)
大震災、「移行期的混乱」以降の個人・社会のあり方とは?政治家も経済学者も口にしない、「国民経済」復興論。短期的ではなく長期的な視点での復興策を、血の通った言葉で書きつづった感動的な論考。

あいかわらずのおもしろさである。著者の作品としては比較的うすいし、文体もですます調であっという間に読み終わってしまうところが惜しいくらいだ。あっという間に読み終わってしまうのに、その全体像を語れといわれても容易にしえない老獪さもまたあいかわらずであり、いま、このように読後の感想を記していても、その内容をなんとも語りようがない。

いえるのは、冒頭に置いた梗概にある「論考」というよりは、著者自身が述べているようにエッセイに近いものであるということ。起業に関するビジネス書的なものではないことも、著者自身が述べている。そして正直なところ、全体としてのまとまりには欠けている。

でも、それがいい、ということもいえる。長めのアフォリズムが有機的に絡まりながら、全体としてはゆるやかな繋がりを持つという言い方か。そこかしこにある示唆的な言葉たちが、読むものの心の何かを起動させる作用がある。そこから、読者は興味や関心を広げればいい、と、そんなことを感じさせる一冊。


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山崎寿人:『年収100万円の豊かな節約生活』(文藝春秋) [ebook]

年収100万円の豊かな節約生活

年収100万円の豊かな節約生活


165 名前:Trader@Live![sage] 投稿日:2012/02/07(火) 21:32:28.10 ID:MyingYRV
年収800万超えたあたりから寿司が止まって見えるらしい

このツィートに吹いた

年収800万はともかくとして、配偶者と盛岡の寿司屋のカウンター席に座ったときは感慨深いものがあった。お財布ののなかみを気にせずに食べられるというのは、エポックメイキングなことだったのだ。

そういえば、夢枕獏が売れっ子作家になって良かったこととして「財布の中身を気にせずに焼肉が食べられるようになったこと」といってたよなあ。


出版社サイトより
20年間働かず月3万円で暮らす男の不思議な日常 東大を卒業して超有名企業に就職するも5年で退職。以来20年間定職に就かず、工夫を重ねて貧乏を極楽に換えた男の生活の智恵。

当方にとっては衝撃的な一冊。なぜかといえば、それだけが目的ではないにせよ、止まって見える寿司を食べることが目標の一つであった会社員生活の根底を揺るがすものがあったから。お金を気にせずに食べられるということは、実はお金を気にして食べているということなんだな、と。

著者のすごいところは、お金が「なければないでもやっていく」という精神の強靭さにあると思う。このあたりは「なければないでもなんとかなるさ」という楽天的な考え方とはまったくちがうものだ。単に流されるだけなのではなく、貧乏に積極的に相対する、というスタンス。

そこには、一定程度に長期的視野を持ち、手持ちのリソースを最適に配分するという冷静な知性がある。だから、仮に同様に年収100万が入ってくるような立場にあったとしても、当方をはじめとした凡人は決して真似できないだろう。

それでもね、たとえ収入が大幅に減ったとしても、知恵と工夫とチャレンジする精神とまめまめしく動くことができるなら、なんとかやっていけるかもしれないという、(本来の意味ではないかもしれないけれど)勇気を与えてくれる一冊と思う。


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ジャック・ヴァンス:『奇跡なす者たち』(国書刊行会) [book]

奇跡なす者たち (未来の文学)

奇跡なす者たち (未来の文学)

初めに告白しておかねばならないのは、本書も該当するシリーズである<未来の文学>叢書はすべて所有しているのだが、実は一冊も読了したことがない。


内容(「BOOKデータベースより)
独特のユーモアで彩られた、魅力あふれる異郷描写で熱狂的なファンを持ち、ダン・シモンズジョージ・R・R・マーティンらに多大な影響を与えてきた名匠ヴァンス、浅倉久志編による本邦初の短篇集が登場! 代表作「月の蛾」からヒューゴー/ネビュラ両賞受賞作「最後の城」までヴァンスの魅力を凝縮したベスト・コレクション、全8篇。

初めて読了した<未来の文学>シリーズの一冊が本書であることは当方にとってはとても納得できることだった。誤解を承知で言えば、ジャック・ヴァンスは大衆向けの通俗作家だと思うから。プロットはそれほど複雑ではないし、ちりばめられた伏線も最後にはきちんと回収される。わかりやすい物語作家といえるだろう。

にもかかわらず、凡百のSF作家と異なる点は、なんとも言いがたい雰囲気というか品格というか、いまどきの物語が失ってしまったものに満ち溢れているから。その感覚は本書でも再確認できた。

白眉は後半の中篇三作、「奇跡なす者たち」、「月の蛾」、「最後の城」だろう。また「保護色」は、昔懐かしきスペースオペラを想起させる無茶苦茶さがあったりして愉しめる。思いのほかヴァラエティに富んだ作品集で、間違いなくおすすめできる一冊。


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