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高野和明:『幽霊人命救助隊』(文藝春秋) [book]

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

幽霊人命救助隊 (文春文庫)


内容(「BOOKデータベースより)
浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化。

著者の作品は初読。第47回の江戸川乱歩賞受賞作家だが、一連の同賞受賞作品をリアルタイムに読んでいたのは『 テロリストのパラソル 』までだったから著者の作品は読んでいないのだ。

もともとが脚本家だったらしいので、その映像を意識した作りには納得できるものがある。ちなみに、映像化する場合に当方がキャスティングするなら主人公の裕一役には松山ケンイチ・美晴役に栗山千明・八木役には泉谷しげる・市川役には小日向文世、というところか。月並みだけどね。

閑話休題。本書は現代日本社会の課題のひとつである「自殺問題」に斬り込んだ作品。重いうえに明るい題材とはいえないのだが、そこは主要登場人物(幽霊)たちに微妙な世代間ギャップを与え、そこからくる笑いによって雰囲気を和らげるという技術が盛り込まれている。

一方で、四名の人となりに関する書き込みが薄いような気がした。元やくざの八木以外の印象が薄いのだ。それは彼らが救出しようとする自殺希望者たちの人生を浮き彫りにするためということなんだろうが、少し物足りなかったのは確かだ。

また、自殺という行為と密接な関係にある「うつ病」についての説明が些か大括りすぎやしないか、という印象もある。そう簡単に病院に行けないとか、精神疾患に対する忌避感は誰しも持っているだろう。もちろん、そこには著者の「まずはお医者さんに相談」という思いも込められてのことだろう。

と、なんだか文句が多いのだが、終盤も押し詰まってからの展開には目を見張るものがある。油断していたこともあったのだが、「お、そういうふうにきたか」と当方としては意想外のものだった。そして、ラストで示される四名の思いに、恥ずかしながら涙してしまった。

軽妙なエンタテインメントの装いをまといながらも、全体に流れる人生を肯定しようとする姿勢が本書を不思議な人間賛歌にしている。「どうよ?」とひとに訊かれたら、当方は「好きだね」と答えるような作品。


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