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2011年09月の読書メーター [a day in the life]

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高野和明:『幽霊人命救助隊』(文藝春秋) [book]

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

  • 作者: 高野 和明
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化。

著者の作品は初読。第47回の江戸川乱歩賞受賞作家だが、一連の同賞受賞作品をリアルタイムに読んでいたのは『 テロリストのパラソル 』までだったから著者の作品は読んでいないのだ。

もともとが脚本家だったらしいので、その映像を意識した作りには納得できるものがある。ちなみに、映像化する場合に当方がキャスティングするなら主人公の裕一役には松山ケンイチ・美晴役に栗山千明・八木役には泉谷しげる・市川役には小日向文世、というところか。月並みだけどね。

閑話休題。本書は現代日本社会の課題のひとつである「自殺問題」に斬り込んだ作品。重いうえに明るい題材とはいえないのだが、そこは主要登場人物(幽霊)たちに微妙な世代間ギャップを与え、そこからくる笑いによって雰囲気を和らげるという技術が盛り込まれている。

一方で、四名の人となりに関する書き込みが薄いような気がした。元やくざの八木以外の印象が薄いのだ。それは彼らが救出しようとする自殺希望者たちの人生を浮き彫りにするためということなんだろうが、少し物足りなかったのは確かだ。

また、自殺という行為と密接な関係にある「うつ病」についての説明が些か大括りすぎやしないか、という印象もある。そう簡単に病院に行けないとか、精神疾患に対する忌避感は誰しも持っているだろう。もちろん、そこには著者の「まずはお医者さんに相談」という思いも込められてのことだろう。

と、なんだか文句が多いのだが、終盤も押し詰まってからの展開には目を見張るものがある。油断していたこともあったのだが、「お、そういうふうにきたか」と当方としては意想外のものだった。そして、ラストで示される四名の思いに、恥ずかしながら涙してしまった。

軽妙なエンタテインメントの装いをまといながらも、全体に流れる人生を肯定しようとする姿勢が本書を不思議な人間賛歌にしている。「どうよ?」とひとに訊かれたら、当方は「好きだね」と答えるような作品。


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石持浅海:『人面屋敷の惨劇』(講談社) [book]

人面屋敷の惨劇 (講談社ノベルス)

人面屋敷の惨劇 (講談社ノベルス)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/08/04
  • メディア: 新書

内容(「BOOK」データベースより)
東京都西部で起きた連続幼児失踪事件。我が子を失った美菜子はじめ6人の被害者家族は、積年の悲嘆の果てに、かつて犯人と目された投資家、土佐が暮らす通称「人面屋敷」へと乗り込む。屋敷の中で「人面」の忌まわしき真相を知った親たちの激情は、抑えがたい殺意へと変容。さらに謎の美少女が突然現れたことで、誰もが予想すらしなかった悲劇をも招き寄せていく。論理(ロジック)×狂気(マッドネス)。気鋭のミステリー2011年進化型。

いやはや、えれえもん読んぢまったというのが読後の第一印象。従来の著者の持ち味に講談社の新本格テイストを加えたような感じ。いや、新本格ってほとんど読んだことがないのだけどね。

これまでの著者の作品のクローズドサークルものは、虚実皮膜のかろうじて「こちら側」にとどまっていたような気がするが、本書では向こう側に突き抜けてしまったようだ。いや、向こう側がどっちだかよくわからないのだが。

もちろん、従来からの(当方を含めた)著者のファンは止められたって読むのだろうが、初めてで耐性のない人が読んだら「なんじゃこりゃ!」と怒るかもしれない。そのくらいの摩訶不思議感がある作品。くれぐれもお取り扱いには注意を。


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『世界侵略:ロサンゼルス決戦』 [movie]

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キャスト:アーロン・エッカート、ミシェル・ロドリゲス、ラモン・ロドリゲス、ブリジット・モイナハン、Ne-Yo、マイケル・ペーニャ
監督:ジョナサン・リーベスマン
原題:Battle: Los Angeles
製作国:2011年アメリカ映画
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間:116分


ストーリー
1942年、米ロサンゼルス上空に未確認飛行物体(UFO)の編隊が出現し、空軍が対空砲火を行うも撃墜は失敗。それ以降、世界各国で不気味な円盤の目撃情報が相次ぐ。そして2011年、ついに宇宙からの地球侵略が開始される。人類最後の砦(とりで)となったロサンゼルスを舞台に、エイリアンの侵略に立ち向かう米海兵隊員たちの戦いを描くSFアクション。主演にアーロン・エッカート。「テキサス・チェーンソー ビギニング」のジョナサン・リーベスマンがメガホンをとる。

2011年夏の地球侵略SF映画三作(『スカイライン-征服-』,『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』)の掉尾を飾るのが本作。結論から申し上げると、当方は『スカイライン~』がいちばん愉しめたかな。

正確に言えば本作は、異星人による地球侵略をテーマにした映画というよりは、むしろ戦争映画というべき作品だ。なにしろプロットが「敵制圧地域にいる民間人救出」であり、「敵中突破」であり、ネタバレになるから言わないけど終盤では昔懐かしきアリステア・マクリーン風の冒険行となるのだ。

うがった観方をすれば、21世紀最初の十年紀が終わった現在で戦争映画を作ろうとすると各界からの反発が大きいから、敵を異星人にせざるを得ないということがあるんだろう。正直なところ米国海兵隊のプロパガンダ映画として観られなくもないのだし。

「戦争映画」というジャンルとしてみれば、ミリオタな方が喜ぶようなディテールは感じられるが、レイティングの絡みなのか、肉片が飛び散るような過激な描写はなかった。もちろん、当方はそういう描写が苦手なので良かったのだが。

キャスト面では、アーロン・エッカートが過去にトラウマを持つ軍曹として好演していたが、基本的には軍人役は似合わないと思う。マッチョはマッチョなんだけど、マッチョな役柄が似合わない稀有な俳優。

一方で、ミシェル・ロドリゲスは当方認定「世界でいちばん女性兵士役が似合う女優」を不動のものにしてしまった。彼女がいるだけで戦場が引き締まるんだよね。そしてブリジット・モイナハンを久々に銀幕で観られたのがうれしかった。

それにしても『 第9地区 』からこっち、いろいろなエイリアンが地球に来ているが、その宇宙船や兵器のいずれもが似たようなデザインなのが気になる。なんだかね、ハリウッドのイマジネーションが尽きかけているんじゃないかと心配だ。その点では日本のアニメーションのほうが勝っているように思う。

えっと、軽くまとめると、地球侵略SF映画だと思って観るとスカされてしまうところはあるが、きまじめに作りこまれており大きくは破綻していないから、観て損はなかったというところかな。


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SONY タブレットデバイス(SGPT111JP/S)がやってきた [gadget]

タブレットPCとかスレートPCとかいろいろと呼び名はあれど、その類のデバイスにはあまり興味がなかった。その理由を記してみると

  1. 可搬性の問題。それほど小さくないし液晶は剥き出しだから、モバイル用途に適してなさそう。
  2. バッテリの持続性が中途半端。どの機器もだいたいが6時間程度ではないか。
  3. 入力がハードウェアキーボードではないから、結局やりたい作業ができなさそう。

てなものか。平たく言ってしまえば、何に使えばいいかわからない、ということだ。

では、なぜ今回SONY謹製のタブレットPCを購入したのかといえば、それはソフトウェアが魅力的だったから。当方は電子書籍閲覧端末"Reader"ユーザなので、PRS-350の5インチ画面のほぼ倍になる9.4インチ画面でこれまで購入してきた書籍データが読める(?)というのがうれしい。最近では、"ebook japan" のコミックなども購入していて、それらも専用アプリを導入すれば本機で読めそうなことがわかった。

てなわけで、直営のソニーストア・オンラインで注文すれば発売日に到着しそうなこともありポチったのだった。とりあえず開梱の儀である。

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◆箱は思ったよりも大きい。
◆開けると、まずはクイックスタートガイド。もちろん読まない
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◆クイックスタートガイドを取り払うと本体がお目見え◆同梱物は、各種マニュアル類・保証書・ACアダプタ・ストラップ紐。意外だったのはUSBケーブルがないこと。持っていない方は購入しておいたほうがいいと思う
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◆本体を持ってみる。想像していたよりは軽い
 


仮住まいには無線LAN環境がないので近所のフリースポットでいじってみることにしよう。インプレなどはまたのちほど。 ノシ


矢作俊彦:『引擎/ENGINE』(新潮社) [book]

エンジン/ENGINE

エンジン/ENGINE

  • 作者: 矢作俊彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/05/31
  • メディア: 単行本

タイトルの「引擎」は中国語で「エンジン」を意味し、「ピンイン:yǐnqíng」と発音するらしい。ネットで検索しただけなんだけどね。ちなみに本書は新庁舎新潮社の雑誌「ENGINE」に2004年に連載されていたもの。


高級外車窃盗団を追う築地署の刑事・游二(りゅうじ)の前に、その女は立ちふさがった。ティファニーのショウウインドーに.30カービン弾をぶちこみ、消えた女。魔に取り憑かれたかのように、彼は女を追い始める。宝石店襲撃、刑事殺し、高級車炎上、ビル爆破……息もつかせぬ緊迫の展開。著者渾身の傑作! 銃弾で描いた狂恋。

ということもあってからだろう、本書は高級車の窃盗団を追う警察官たちのシーンから始まる。以降、著者の作品年としては珍しいバイオレンスシーンが続く物語となっている。そうはいっても、矢作節は相変わらずで、登場人物たちのワイズクラックの応酬が愉しめることは間違いない。

あと、主人公の游二が品川の海っぺりに住んでいたりと、二村シリーズを髣髴とさせる部分もある。やはり、著者の小説には海とか運河のある街が似合うような気がする。

警察小説、あるいは暗黒小説を思わせる筋運びを読んでいくと、いつのまにかその様相を変えてくるという手管を、わかりにくいと感じるか否かでその印象が違う小説だ。当方はわかりやすいと思ったクチで、そこに少しばかりの物足りなさを感じた。とはいえ、いまだに新刊で著者の小説を読めるというのはうれしいことだ。


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矢作俊彦,司城志朗:『百発百中』(角川書店) [book]

百発百中  狼は走れ豚は食え、人は昼から夢を見ろ

百発百中 狼は走れ豚は食え、人は昼から夢を見ろ

  • 作者: 司城 志朗
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/09/25
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
八ヶ岳の南東に広がる高原を縦断する単線鉄道のマイアミ駅―もともとは舞網と書いていたこの駅のあたり、バブルの頃に街ぐるみで観光地としての開発を進めたが、いまでは面影もなくゴーストタウンの如くといった様。橘秀次郎と大槻政太郎の二人が、友人の遺言のために訪れようとしている、ネクストワールドと名付けられたゴルフ場と温泉付きの老人ホームもいまや経営者が逃げ銀行管理になってしまっていた。遺品を渡したらとっととその場を去るつもりだった二人は行きがかり上しばらくホームを手伝うことになるが、見えてきたのはレジャー開発企業の土地再開発の計画だった…。

あれ、出版されたのはほぼ一年前なんだね。ぜんぜん意識していなかった。いつごろから部屋の本の山の中に埋もれていたのかは定かではないが、何気なく読み始めたらしっかりとした面白さで読みきってしまった。

鹿爪らしくなりがちな題材でありながら愉しく読み進められたのは、コメディタッチといえる雰囲気ゆえだ。特に主人公二人である秀と政のやり取りがしゃれている。前半部分は、その二人が"中国"に行く羽目になった技術を、ホームの老人たちに伝授するというもの。

後半以降が本書のメインストーリーとなるのだが、委細を記述するとネタバレになるので割愛。細かいところでは、「そこは、うまくいきすぎなんじゃない?」という都合のよさは見受けられるのだが、そこが気にならない展開の妙がある。

いわゆる強奪小説に義賊モノのスパイスを振りかけた作品といえる。主人公たちに感情移入できるか否かが評価の分かれるところだろうが、当方は素直に愉しめた。


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都筑道夫:『宇宙大密室』(東京創元社) [book]

宇宙大密室 (創元SF文庫)

宇宙大密室 (創元SF文庫)

  • 作者: 都筑 道夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/06/21
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
初期の日本SF界を支えた名手による唯一のSF短編集。流刑星にただ一人閉じ込められた囚人はいかにして殺害されたか。あなたは60年後に殺された、と言って訪ねてきた男。自殺には一千万の税金がかかる時代に無一文で自殺に成功する方法とは。奇抜な着想と洒脱な筆致の短編17編に加え、書籍初収録の幻の中編SFスリラーと、SF出版人としての業績をたどるインタビューを収めた。

著者の作品を読むのは何年ぶりだろう。『 三重露出 』を昔々に読んだ覚えがあるきりだ。今回は著者のSF短編集ということで入手、読んでみた。

結論から申し述べると「巧い!」の一言だ。プロット派というか技巧派というか、あきらかに細部を決めてから執筆するタイプのように思える。その点では、岡嶋二人(と井上夢人)がその衣鉢を受け継いでいるように感じる。

で、本作では、ウリになっているSF作品の出来よりも、なぜか当方には「鼻たれ天狗」シリーズが愉しく読めた。いわゆる艶笑譚なんだが、そこには古き良き日本語のリズムが刻み込まれていて心地よい。

あと、「忘れられた夜」という作品がすごい。(おそらくは)よくあるハルマゲドン後の都市を描いた小説で、そのイメージ自体はありふれたもの。でもね、そのイメージが昭和45年に書かれていたということがすごい。当然のことながら「マッドマックス」や「北斗の拳」より昔のことだ。本作品集の中では異彩を放っているといえる。

良くも悪くも職人作家ということであまり売れているという印象はない著者だが、依然として復刊されているということは、この手の作風にニーズがあるということにちがいない。電子書籍でも何冊か発売されているので機会あらば読んでみることにしよう。


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横田増生:『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』(朝日新聞出版) [book]

潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)

潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)

  • 作者: 横田 増生
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2010/12/07
  • メディア: 文庫

単行本を購入して読んだのに、意識的に再読してしまった。というのは、文庫版である本書の第二部にあたる部分が書き下ろしだったからだ。こういうときに電子書籍で出版されれば場所をとらないで済むのに、と思う。とはいえ、再読とはいっても、中年期に入ってからの記憶の去り行くスピードは著しく、意外に愉しく読めてしまったのは痛し痒しだ。


内容(「BOOK」データベースより)
アマゾンジャパンの物流倉庫に、ひとりのジャーナリストが潜入する。厳しいノルマとコンピュータによる徹底的な管理。そしてアマゾン社員を頂点とする「カースト制度」のなか、著者が目にした「あるもの」とは…。驚異的な成長の裏に隠された真実に迫る。

で、初めて読んだときに感じた違和感は、再読時にも感じたことを申し述べておかねばならない。すなわち、本書のテーマのひとつにアマゾンに潜入して同社の非情な労務管理体制を暴露するということがあるようなのだが、その点で、「これが非情か?」と感じたことである。

こういっちゃなんだが、本書で描かれている程度の労働はある意味ではなまっちょろいものと思えるのだ。当方は大学時代にアルバイトでファミレスのコックさんとして4年間働いたが、あのときの凄まじい状況に比べればなんてことはない、という感じだ(非情、というよりはキツい、ということだが)。ほんと、仕事で追われる夢で魘されたくらいなのだから。

一方で、その時分では厳しく管理された覚えはなかったし、ほんのちょっとしたことぐらいなら自分の裁量で動けたことはある。あるいは、最終的には朝の時間帯ではアルバイトの癖に一人だけで厨房を任されたりした。そう、時給は安かったけれど、働き甲斐はあったのだ。

本書で描かれる労働の現場が、パート/アルバイトにとって働き甲斐だとか自己の裁量とあまり関係ない職場であるということは、確かに「格差」を感じさせる部分ではある。でもね、それゆえにアマゾンの流通センターが非人間的な現場であるというような筆致に違和感を覚えたのだ。

と、そういった文句を別にすれば、著者の行動力や調査力には舌を巻く。何気ないアルバイト間の情報から同社の売上を推測したりする場面なんかは秀逸なシーンと思う。読みやすくわかりやすい文章ですいすいと読めるところも良い。第二部におけるマーケットプレイスの動向などは初耳のことも多く、単行本で読んだ人も再読してみて欲しいという一冊。


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野村進:『調べる技術・書く技術』(講談社) [book]

調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)

調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)

  • 作者: 野村 進
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/04/18
  • メディア: 新書

著者の作品は意外に読んできている。大宅賞受賞作の『 コリアン世界の旅 』をはじめとして、『 救急精神病棟 』や『 千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン 』と、いずれも著者の作品と意識せず手に取ったのが不思議だ。多分に著者の選ぶ題材が当方の関心に引っかかるものがあったからだろうと推測される。


内容(「BOOK」データベースより)
テーマの選び方、資料収集法、取材の実際から原稿完成まで、丁寧に教える。これがプロの「知的生産術」だ!

さて、本書はノンフィクション作家やルポライタ、あるいはいわゆる記者(新聞や雑誌ほか)を目指す人向けに書かれているもの。だからなのかどうかは判然としないが、書く技術というよりはむしろ調べる技術に紙幅が多く割かれている。

就中、インタビューの技術のヴォリュームが多い…という印象があったのだが、冷静に目次を見てみるとそんなこともない。逆に言えば、そんな印象を受けたのは、インタビューという営為がノンフィクションを執筆するに当たっての重要事項と著者が捉えている証左に違いない。

「調べる」ことは、正しい場所(現場から図書館まで)や正しい情報源、そしてきちんとウラを取りさえすれば一定程度の水準までは達することは可能だろう。しかし、生身の人間と相対し有益な情報を得るということは、それまで得た情報を後ろ盾にしてなお、五感を研ぎ澄まして臨まないと成果を得るのが難しいと、そんな主張を読み取ることができる。

弊ブログをご覧の方は、当方がルポやノンフィクションというジャンルは好んでいるのはおわかりだろうが、読んでいる当人は、これほどの技術が必要とは思い至らなかったということがある。書き手たちは、まずは胆力、そして場数を踏んでスキルを向上させているんだろう。恐れ入ってしまう。

当方はもはや、そういった道に入り込むにはロートルではある。じゃあ、なぜ手に取ったのかといわれると良くわからないというのが不思議なのだが、やはり本書はルポライターなどを目指す若者向けという位置づけだ。 とはいうものの、ノンフィクション作家の執筆の舞台裏を覗けるという意味では愉しい読書になったのであった。


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内田樹(選),高橋源一郎(選)『嘘みたいな本当の話』(イースト・プレス) [book]

嘘みたいな本当の話 [日本版]ナショナル・ストーリー・プロジェクト

嘘みたいな本当の話 [日本版]ナショナル・ストーリー・プロジェクト

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2011/06/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

内容(「BOOK」データベースより)
泣いた、笑った、驚いた! 日本中から届いた149の実話たち。

[日本版]、とわざわざ書いてあるくらいだからもちろん海外版もあるのであって、それはすなわち米国版が本家である。本家はあのポール・オースターが"ラジオ番組のために全米から募り、精選した「普通の」人々の、ちょっと「普通でない」実話"というもの。その米国版を基に、内田・高橋両氏が編纂したのが本書というわけ。

そういう位置づけのものだからさくさく読めることには間違いない。なにしろ字数制限が1,000字だし、短いものだと1行で9文字なんてものもある。その内容とか特色については、本書の内田氏の序文で言い尽くされている感があるので当方がどうのこうの言う余地はない。

ひとつだけ言うことがあるとしたら、それは本書に収められた掌話群が非常に洗練されているということ。スマートなんだよね。そこが物足りないという印象は持ってしまった。正直に申し上げて、インパクトという部分では、日本最大の電子掲示板サイト「2ちゃんねる」における掌話のほうが上だ。例として、当方のgoogleブックマークにあるものの一部を列挙しておこう。

◆ほんわか2ちゃんねる 理想的親子像
http://honwaka2ch.blog90.fc2.com/blog-entry-6811.html

◆育児板拾い読み@2ch 兄「念のために、お年玉持ってきた。」
http://ikuzi2.blog73.fc2.com/blog-entry-11810.html

◆ほんわか2ちゃんねる うちの猫は漏れを自分の子供だと思ってるフシがある
http://honwaka2ch.blog90.fc2.com/blog-entry-3498.html

もちろん、嘘みたいな嘘の話なのかもしれないけれど、それは本書におけるエピソード群だって嘘っぱちの可能性はある。それでも、電子掲示板に書き込まれたこれらのエピソードには良い意味での泥臭さがあり当方には好もしい。

なんてことを言ってはいるが、もちろん本書も1,050円でこれだけ愉しく読めるのだから侮ってはならないと思う。透き間時間にのんびりと読んで、自分の好みのエピソードを見つけるという楽しみがある一冊として読んで損はないです。


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玄田有史:『希望のつくり方』(岩波書店) [book]

希望のつくり方 (岩波新書)

希望のつくり方 (岩波新書)

  • 作者: 玄田 有史
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/10/21
  • メディア: 新書

著者の本を初めて読んだのは『 仕事のなかの曖昧な不安 』だった。同書に深く感銘を受けたこともあり、ネットで著者を検索していたら、なんというシンクロニシティ、数日後に講演会があるではないか。応募メールを検索してみたら、2003年の4月に開催されていた。

当時の職場に程近い中央大学駿河台記念館の680号室で開催されたそれは、著者がニート―フリーターでもなく失業者でもなく 』を出版する前で、マスコミにもそれほど名が知られていなかったためか、数十人規模のこじんまりとしたものだった。

講演会の内容は、『仕事のなかの~』の主張を基にしたものだから新味はなかったように記憶している。ただ、出席者数が少数だったからだろうか、玄田氏が参加者に質問をしてそれに答えるという学校の授業のような形式だったのが印象的だった。

実は当方も同氏に質問された。「今現在の失業率は?」というものだった。たまたま、その数値を知っていたので答えることができた。いやあ、それでもどきどきしたよなあ。


内容(「BOOK」データベースより)
希望は与えられるものではない、自分たちの手で見つけるものだ。でも、どうやって?著者が出会った、さまざまな声のなかに、国の、地域の、会社の、そして個人の閉塞した現状をのり越えて、希望をつくり出すヒントをさがしていく。「希望学」の成果を活かし、未来へと生きるすべての人たちに放つ、しなやかなメッセージ。

本作についても、著者の主張は一貫している。悪く言えばワンパターンだ。「ウィーク・タイズ」というタームや、「人間、壁にぶち当たったらどうするか」という問いに対する解も同一。

で、当方はその一貫している主張が心地よく思えるのだ。とにもかくにも、自分の言いたいことを少しでも人口に膾炙させたいという著者の思いが伝わってくるということだ。本書のテーマとなっている「希望学」についても、『仕事のなかの~』から連綿と続いている主張が昇華されたものと理解している。

その「熱さ」をどのように捉えるかによって評価は変わってくるかと思うのだが、当方は単純に好きなので、本書もお奨めできる一冊といえる。


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『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』 [movie]

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キャスト: シャイア・ラブーフ、ジョシュ・デュアメル、ジョン・タトゥーロ、タイリース・ギブソン、ロージー・ハンティントン=ホワイトレイ、パトリック・デンプシー、ケビン・ダン、ジュリー・ホワイト、ジョン・マルコビッチ、フランシス・マクドーマンド、アラン・テュディック、ケン・チョン、グレン・モーシャワー、レスター・スパイト、バズ・オルドリン
監督:マイケル・ベイ
原題: Transformers: Dark of the Moon
製作国: 2011年アメリカ映画
配給: パラマウント
上映時間: 154分


ストーリー
1969年7月20日、アポロ11号による人類初の月面着陸により、月の裏側に金属生命体=トランスフォーマーの宇宙船が不時着していたことが発見された。NASAとアメリカ政府により長らく隠されていたその事実から、トランスフォーマーをめぐるナゾが明らかにされていく。シャイア・ラブーフらメインキャストが続投するなか、ヒロインは前2作のミーガン・フォックス演じるミカエラから、モデル出身の新鋭ロージー・ハンティントン=ホワイトレイが演じる新キャラ、カーリーに交代。

鑑賞するか否か迷っていたのだが、前2作とも観ていたこともあり劇場へ赴く。なぜ迷っていたのかといえば、あきらかにどの程度の面白さかを予測できてしまうからだった。で、鑑賞し終えた今、予測どおりだった面白さを噛み締めているわけだ。

シリーズものの弱さというのはこの辺りにあるのかもしれないと何度も書いてきたが、本作もその軛から逃れえていない。だってさ、バッドエンドはありえないじゃないですか、基本的に。

気になったのは主人公がいささかカッコ悪く描かれすぎていること。シャイア・ラブーフ演じるサムは、大学卒業後も職を得られない青年として描かれているのだが、それってどうなのさ、という感じだ。ヒロイン役のロージー・ハンティントン=ホワイトレイとの身長差も甚だしく、なんかね、冴えないんだよな。

あと、プロットがわかりにくいことも言っておこう。ロボット同士の戦いなのだが、そのロボットの考えることが人間の考えることと大差ないというのがややこしい。最終的に描きたかったのが、シカゴにおけるロボットと人間が入り乱れての市街戦だったのならもう少しシンプルなストーリーでよかった。

これまでのシリーズの中ではいちばん突っ込みどころが多い作品。もちろん、あいかわらずのスピード感ある展開と見応えのあるSFXで水準には達しているから鑑賞して損はないと思う。


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『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』 [movie]

監督:チャールズ・ファーガソン
原案・脚本:チャド・ベック
ナレーション:マット・デイモン
原題: Inside Job
製作国:2010年アメリカ映画
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間:78分
公式サイト


ストーリー
2008年のリーマン・ブラザーズ経営破たん“リーマン・ショック”に端を発した世界的経済不況の真実に迫るドキュメンタリー。金融業界人や政治家、大学教授、ジャーナリストらキーパーソンへのインタビューや、徹底したリサーチ、データ収集によってあらゆる観点から問題を検証する。第83回米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞。ナレーションをマット・デイモンが担当している。

ノンフィクション映画というジャンルは相当に好き。その手のジャンルが邦画にあまり見当たらないということもあるが、その独自の雰囲気がいいと思う。なんというかね、徹底的に当事者にインタビューするという手法が米国らしいというべきか。

本作についても、その手法が取り入られていて、金融危機を引き起こした一因と推定される人物たちへの追及が描かれる。ついには怒っちゃう人まで出てくるのだから徹底している。そのスリリングさで78分はあっという間だったといっておこう。

ただね、テーマとなっているのがサブプライム問題を端緒とする「リーマンショック」だから、新しさや驚きは少なかったのが残念。描かれる事象は、ネットで検索したりして既知のものが多かったし。

それでも、全五部に章立てされた構成の最終章は、なんだかとても重苦しいというか切ないというか、人間はどの国でもそんなに変わらないのだなあという諦念を感じてしまうものだ。この状況から米国がどのような道を進んでいくのか、注目せねばならないと思わせるのだった。


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山田順:『出版大崩壊』(文藝春秋) [book]

出版大崩壊 (文春新書)

出版大崩壊 (文春新書)

  • 作者: 山田 順
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/03/17
  • メディア: 新書

ここのところ読書量が減っている要因がつかめない。いや、ゲームなどをちょろちょろプレイしてしまっているというのはある。それでもね、月に三冊程度というのは惨憺たる有様だ。要するに気分の問題だろうから、いずれは回復するものと思ってはいるが。さて、下記をみると、そうはいっても当方はヘビーユーザーに位置づけられてしまうようだ。

◆日本の年齢階層別 読書人口  (寄稿:冬狐洞隆也氏):【 FAX DM、FAX送信の日本著者販促センター
   http://www.1book.co.jp/004012.html

まあ、購入冊数だけで言えば超ヘビーユーザーだから、出版業界への貢献度は高いといっていいだろう。読書メーターの積読冊数は146冊だ…orz


内容(「BOOK」データベースより)
著者は2010年5月、34年間勤めた出版社を退社し、これまで培ってきた人脈をネットワーク化して電子出版のビジネスに手を染めてみて。そうしていま言えることは、「電子出版がつくる未来」は幻想にすぎず、既存メディアのクビを絞めるだけだと思うようになった。

著者は、あのカッパの光文社を退職してフリーになった人。そのあたりについては下掲に詳しいと思う。

閑話休題。通読すると、前半部分の電子出版全般の動向やハードウェア(iPadやkindle)の普及に関する話題は既知の事柄が多く、この調子で続くのかなと思っていた。

ところが、後半からの「電子出版の収益構造」あたりから迫力が増してくる。というか、電子出版というのはそんなに儲からないのか、と驚く。もちろん、それらは既存の仕組みに乗っけてやろうとするから無理があるのだろうが。

全体的には「出版大崩壊」というタイトルと「電子出版」に対する考え方が有機的に結びついていないという印象は持ったものの、ところどころに鋭い指摘があるところはさすがと感じた。

で、実はそんなことよりも当方が驚いたのは著者のぶっちゃけ振りだ。たとえば「海賊版」に関する記述や読書する層について。


(前略)北京でも上海でも露店に行けば、正規版と並んで海賊版が堂々と売られている。
私も一消費者としてはその恩恵にあずかっているので書きづらいが、中国に行ったときに、書籍は別として、CDやDVDからPCソフトまで、海賊版以外は買ったことがない。

131ページ
 

リテラシーの高い人と低い人はいくらインタラクティブだの、ソーシャルメディアだと言おうと、コミュニケーションできない。誰が、自分より知能程度や能力が低いと思われる人間のフォロワーになるだろうか?
リコウはリコウと交信し、バカはバカと交信する。これが低度情報化社会で、ネットの本質だとしたら、そこで起こることは「悪貨は良貨を駆逐する」ということではないだろうか。

214ページ
 

なかなかどうして、言いたいことを言ってらっしゃる。うーむ、Twitterあたりでやったら炎上間違いなしだな。その点では、やはり出版というのは牧歌的なのだなと思った次第。


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