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井上夢人:『あわせ鏡に飛び込んで 』(講談社) [book]

あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)

あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)

先日エントリした『 ダブル・プロット 』の著者である岡嶋二人のコンビ解散後の一人である井上夢人の作品集。『ダブル~」を読み終わった後に積ん読本の山を見るとなぜか買ってあった本書が目に入ったので手に取る。

ここ数週間、お昼休みなどのコマギレ時間では短編集、就寝前の一時間程度で長編を読むというサイクルだったのだが、本書はその愉しさゆえに就寝前にも読み進めたのだった。


内容(「BOOKデータベースより)
幻の名作「あわせ鏡に飛び込んで」をはじめ、瞬間接着剤で男をつなぎとめようとする女が出てくる「あなたをはなさない」、全篇、悩み相談の手紙だけで構成されたクライムミステリー「書かれなかった手紙」など、選りすぐりの10篇を収録。精緻に仕掛けられた“おとしあな”の恐怖と快感。

読了しての感想を申し上げると、巧い、としか言いようがない。間違いなくお奨めできる。なんだろうね、この巧さは。『ダブル・プロット』では、誠に僭越ながら「先が読めてしまう」とエントリしたのだが、本書の各短篇は短篇ながら先を読ませないおもしろさがある。

岡嶋二人時代の経緯を記した『 おかしな二人 』によれば、執筆は井上氏が主であったと記憶している(うろ覚えだが)。小説の巧さということでは、『ダブルプロット』所載の1980年代に書かれた短篇と十年後に書かれた本書のそれを比べると、あきらかに向上していることに驚く。

そういう意味では、『ダブル・プロット』所載の「ダブルプロット」(表題作ね)における著者と思しき人物の独白は示唆的だ。


世の中には、書きながら小説を作っていく人と、話のすべての骨組みが出来上がってから原稿用紙に向かう人がいるらしいが、ぼくらの場合は後者である。

『ダブル・プロット』(438ページ)

また、本書の巻末の大沢在昌との対談では下記のように発言している。


(前略)プロット派というのかな。構図とか構造のほうから入っていって、次にキャラクターを考えるというつくり方。

本書(395ページ)

とのことで、換言すれば、当方の理解では同じ作家でも「憑依型」と「技術型」の二種類があるということ。本書の著者はまちがいなく「技術型」であり、その技術が年々向上していったのだろうなあ、と思ったのでありました。

それにしてもね、同じ巻末対談にもあるように、本書所載の作品のような「奇妙な味」の短篇を書く人が少なくなったという印象がある。 二昔前ならSF作家がその役を担っていたのだろうが、それも市場の縮小を反映しているということなのか。寂しいかぎりだ。


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