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伯野卓彦:『自治体クライシス』(講談社) [book]

自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い (講談社BIZ)

自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い (講談社BIZ)

  • 作者: 伯野 卓彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/02/03
  • メディア: 単行本

皮肉屋で有名な英国の作家のジョージ・バーナード・ショーがある女優(だったか?)に「私とあなたが結婚したら、あなたの頭脳私の容姿を併せ持った子どもが生まれますよ」といわれると「私の容姿とあなたの頭脳を併せ持った子どもが生まれるかもしれない」と返したそうだ。本書は、本来は「官と民」の良いところを併せ持つことを期待された第三セクターが、その悪いところを併せ持ってしまったがゆえの悲劇を描くノンフィクションだ。


内容(「BOOK」データベースより)
煽った国も銀行も借金で瀕死の市町村を見捨てていた! 廃墟と化したリゾート施設、一括返済の恐怖に脅える市長、金融機関に訴えられた町、風呂にも入れない住民たち…NHK『クローズアップ現代』があぶり出した真実、プロデューサーが描く衝撃のノンフィクション。


著者はNHKの「クローズアップ現代」などのチーフ・プロデューサーを務めた人で、同番組の取材対象として「第三セクター」の調査を始めたところ、その危機的な実態が明らかになったというのが本書の内容だ。

第三セクターとは何か、ということはリンク先を参照していただこう。いわば不発弾であった第三セクターだったが、その信管をハンマーで殴りつけるような法律が2007年 6月に成立した。その名称は「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」。乱暴に要約すれば、これまで地方自治体にとっては簿外だった第三セクターの債務をバランスシートにオンさせなければならならなくなるという法律。それにより、当該自治体の財務体質の健全度を計るわけだ。

結果、2007年現在で7,900社ある第三セクターの約40%が赤字、5%が債務超過に陥っていることが判明した。当方の勝手な推測だが、なかには無理矢理に数字を作っている法人もあるはずだから、実質債務超過の法人はもっとあるのではないか、と思った。

さて、本書で取材対象となった地方自治体は青森県大鰐町・長野県飯縄町・北海道芦別市・同赤平市の四市町村。 そのうちで、もっともページが割かれているのは青森県大鰐町のケースだ。バブル期のリゾート法による大型リゾート施設の建設と、そのために町と手を組んだ民間デベロッパーの凋落(住専問題も関わっている)。残ったのはそれら施設の廃墟と大きな借入金だ。

本書であきらかにされるのは、その借入に地方自治体が損失補償をしているということ。第三セクターによる弁済が無理になったら代位弁済をするという契約だ。そして、多くの自治体がその弁済能力を遙かに超えた借入をしている。にもかかわらず、地方自治体はなんと「自己破産」できないのだ。

赤字を垂れ流してまで運営を継続できず、かといって清算すればその借入金が自治体の財政に重くのしかかって来るという、引くに引けない状態。なぜ、こんなことになったのか、そして責任は誰にあるのか、というのが本書のテーマだ。

そのときの経済情勢によって政策をコロコロと変える国や、その政策にうまく乗って儲けようする民間企業、そして先見性のない地方自治体の首長や議会に責任を求めるのは簡単だ。でもね、最後に著者が言っているように、そんな首長や議員を選んだのはわれわれ市民に違いないわけで、結局ぐるりと廻って自分たちに返ってきてしまうのだ。

第三セクターは、おそらくそんな状態に違いないと思っていたので驚きこそは少なかったものの、確かな取材力に裏打ちされたディテールは読んでいて慄然とする。今の日本の実情を知るという意味では読んでおいて損はない作品。


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