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白戸圭一:『ルポ資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社) [book]

 
ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄

ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄

  • 作者: 白戸 圭一
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2009/07/31
  • メディア: 単行本

EPOの曲で好きなもののひとつに「見知らぬ手と手」がある。1992年に発表されたアルバム『Wica』に収録されている。『Wica』自体が非常に水準の高いアルバムだが、その中でもラストを飾るこの一曲は当方にとっては名曲だ。

J○S○A○に後ろ指を指されるのはイヤなので、歌詞はこのあたりを参照いただくとして、リンク先をお読みになればおわかりのように、電車の中で「海外青年協力隊」のポスター広告を見たことをきっかけとして作られた曲らしい。

本書を読んでいてその「見知らぬ手と手」を思い出したのは、「一緒に泣いてあげ」られも「一緒に怒ってあげ」られもしないけれど、「振り上げていた握り拳」で「ハンカチを探す」ことぐらいならできるかもしれないと思ったからだ。


内容(「BOOK」データベースより)
石油、金、ダイヤモンド、レアメタル…。先進国を支える貴重な資源が大量に眠る大陸、アフリカ。かつての貧困の地が今、高度成長を続けている。だが、その成長の地で犯罪や紛争が頻発し、麻薬の密輸、金融詐欺、海賊行為など国境を越える暴力となって日本にも襲いかかる。資源ブームに沸くアフリカでなぜ、暴力の嵐が吹き荒れるのか。元現地特派員が自らの目で見たアフリカ社会の今を報告する。

本書は、とにもかくにも迫真のルポルタージュである。著者は毎日新聞の特派員として4年間を南アフリカ共和国のヨハネスブルクで過ごしている。そのヨハネスブルクの治安状況はどうかというと、


たとえば、南アの二〇〇六年度の人口十万人あたりの殺人発生率は四十・五件。これは日本の約四十倍、英国の約二十八倍。都市部を中心とした凶悪犯罪発生率が高い米国と比べても、約七倍の高率なのだ。
(11ページ)
 

ところが、である。このヨハネスブルクさえマシに思えるのが第5章で描かれる無政府国家ソマリアだ。どのくらい無秩序かというと、まずは護衛のための私兵集団が随行していないと危険であること。そして、


インフラがボロボロになっている光景なら、長年の紛争で荒廃したコンゴ民主共和国の街でも見ることができる。だが、ソマリアには他の貧しい国々とは決定的に違う光景があった。交差点の信号機である。ホテルの近くの大きな交差点には信号機はあったが、ライトは消えており、青、赤、黄色の部分は砂埃で真っ白だ。交通法規が存在せず、交通法規を執行する警察もないのだから、信号機が稼働していないのは当然である。
(267-268ページ)
 

そんな状況に陥っているアフリカ大陸の諸国について、著者の主張を乱暴に要約すると「豊富に埋蔵されている地下資源のおかげで、南アフリカをはじめとする諸国は経済発展が著しいが、そのために所得格差も拡大し、貧しい側は富に犯罪という手段でアクセスする」というようなものか。

また、もともとが自由に人が行き交っていた大陸に、列強諸国が「国境線」を引いたことも民族間紛争の火種になっている。彼らの紛争を利用しようとするアフリカ各国の政府や、安全保障のためにそれに介入する米露の暗躍など、読んでいて暗澹たる気分になってくる。

第3章では1998年に勃発したコンゴ内線で、結局2002年10月の和平合意までに300万人が戦争の犠牲者になったことや、第4章で描かれるスーダンの「ダルフール紛争」では2003年から2009年のあいだに殺害された住民は30万人と推計されていたり、と恐ろしく命の価値が軽い現実がある。

本書の凄みは、上記のような「死の統計」を評論家のように記述するのではなく、著者が命の危険を冒してまで決行する取材活動にある。特にスーダンとソマリアへの取材は読んでいてハラハラする内容だ。

本書で描かれるアフリカの国々の現実に、当方はなすすべもなく立ちずさむほかはない。だから、本書のようなルポルタージュを手に取りその現実を知ることくらいはしたい。一人でも多くの人に読んでほしいと思うルポルタージュの力作だ。


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