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山田久:『デフレ反転の成長戦略』(東洋経済新報社) [book]

デフレ反転の成長戦略

デフレ反転の成長戦略

いや、恥ずかしながら今年の4月には給料が上がってしまったのである。些少なのかどうだかはわからないが、当方としては過分にいただきすぎているな、と思うことはある。もちろん返納する気はない。で、当方の勤務する会社は不惑にして年齢給はストップしてしまうので、いわゆる職能給が上がったということになる。うーん、仕事における能力とはなんなのだろう? 賃金が上がるとはどういうことなのだろう? そんな疑問があったので本書を手に取る。


内容(「BOOKデータベースより)
なぜ物価と賃金が下がり続けるのか? なぜ金融政策が効かないのか? 日本経済を破綻に追い込みかねない「負の連鎖」をミクロ・マクロの両面から鋭く分析。突破のカギとなる“企業サイドの戦略シフト”と“政府の政策大転換”を訴える話題の書。

そんな疑問に回答がある書物とは思っていなかったので、その件についてはまた違った読書をしてみよう。本書は梗概にある「なぜ物価と賃金が下がり続けるのか」という謎を解き明かし、その対策について論考するというもの。金融機関勤務を経てシンクタンクへ出向という経歴の著者らしく、分析は基本的に定量的なものである。

冒頭の謎については、比較的はやい段階で回答が示される。すなわち、「事業転換よりもコスト削減を優先するという、日本企業の行動様式が大きく影響してきた」というもの。なるほど。平たく言ってしまえば、既得権益を守るためには皆で痛みを分かち合おう、というところか。事業転換にはどうしたって関わる人々の痛みが伴うのであり、そこで余剰とされた人員を吸収するさらに他の新規事業がない以上、コスト削減のための賃金の下落は不可避であったというのが当方の解釈。

また、著者は2000年代前半の労働分配率の下落には労働組合の「賃金よりも雇用」というスタンスに一因を挙げている。さらにその構造上、「基本的には正社員の組合」であらざるをえないことが、今日の正規・非正規社員の賃金の乖離の遠因としているように読める。このあたりの限界については納得できる。とはいうものの当時、組合活動に関わっていた当方としては、現場としてそれ以外のスタンスは考えられなかったことも言っておこう。その辺は感情論になってしまうので詳述は避けておく。

そして、政府の「超低金利政策の継続」が「いわゆる「ゾンビ企業」の存続を許したことである。その結果、健全な企業も競争に勝利した果実としての価格上昇という恩恵を受けることができず、絶え間ないコスト削減競争を余儀なくされている」という記述については、自己矛盾ではあるのだが納得できてしまう。人はやっぱり総論賛成・各論反対に陥りがちだってことだ。

以上が非常に乱暴な第2章までの当方が読み取ったこと。第3章以降は国際比較による事例の研究や、そこから導き出される政策や経営戦略の転換に関する著者の提言が記述されるというもの。国際比較については、ネコとヤマネコとチーターを比較してどうなるんじゃ、というのが当方の正直な感想(日と米、そして独との比較)。三者の歴史的・文化的・経済的・政治的な違いがありすぎるのでは、とも思うが、確かに良いところは取り込んでいかねばということだろう。

最終的に導き出される著者のヴィジョンは、当方には些か理想論に過ぎやしないかとも思える。もちろん、理想があっての未来であることは承知しているが、タイムリミットを2010年と区切ってのものとしてはなかなかハードルが高い。著者の言う政策の転換ができるか否かは、それぞれの危機意識次第だと思う。結局、先延ばしにしてしまうのだろうか。

なんとなく文句が多い感想だが、それだけ刺激的な作品であることには違いない。前半部の数式が並んだりする硬派な部分は読み飛ばしてしまったが、きちんと読み込めばさらに得るところが多いと思う。いずれじっくり再読したい。


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