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石持浅海:『八月の魔法使い』(光文社) [book]

八月の魔法使い

八月の魔法使い


内容(「BOOKデータベースより)
危険だ。関わりあいになるのはあまりにも危険だ。でも、恋人からのSOSに応えないわけにはいかない。入社7年目の若きサラリーマン、経営陣を揺るがす “あってはいけない文書”の謎に挑む! 役員会議室と総務部で同時に提示された“工場事故報告書”が、混乱を引き起こす!これはいったい何だ? たまたま総務部に居合わせた草食系サラリーマンは、役員会議室で事件に巻き込まれた恋人を救えるのか。

上記梗概の「関わりあいになるのはあまりに危険だ」という文章がある意味すごい。ご存知の通り、著者は現役の会社員。この手の小説を書くことは危険だとも思えるが、本編にある以下のような文章を読むと会社での居心地に影響があるのではないかと心配してしまう。


学生時代は、企業というのは深謀遠慮に基づいて行動しているものだと思っていた。しかしいざ入社してみると、大きな勘違いだとわかった。いわゆる経営陣といわれる人たちも、かなり場当たり的な判断で会社の進む方向を決めているのだ。今、目の前で展開している光景は、深雪の経営陣に対するイメージを裏書きするものだった

(37ページ)
 

当方も、図らずも会社の最高意志決定会議に紛れ込んだことがあるのだが、上記の意見については誠に以て同くぁwせdrftgyふじこlp

それはともかく。本書は一介の会社員がとある不可解な状況に巻き込まれそれをいかに打破するかという、著者のミステリの王道パターンを踏襲している。その謎とは、これまた著者のお得意のひとつである「日常の謎」ではなく、『 攪乱者 』とも通底するものと当方には思えた。

本書における攪乱の実行者(と著者)が仕掛けたものは、なるほど、よく考えられたものといえるだろうが、それを受けて描かれる混乱が些か類型的なものであるところが著者らしくない。そこは作品として弱いところと言える。

一方で、独自の倫理観は「会社の論理」という言葉に置き換えられていて、それは当方のような会社員に違和感がない。ということは、いかに会社の論理というものが歪なものであるかをあらためて認識させてくれる。これは著者ならではの技術といえるだろう。

作中時間ではおそらく2時間は経っていないにもかかわらず、濃密な仮説構築とディスカッションが展開されるのは相変わらず。題材は、普通の会社員にもわかりやすいものとなっているから、著者の作品を読まず嫌いの方にはお奨めできる一冊だ。


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