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石持浅海:『この国。』(原書房) [book]

この国。 (ミステリー・リーグ)

この国。 (ミステリー・リーグ)

うーむ。半ば、著者のファン・ブログと化してきたな。いや、それくらい好きってことはある。ここ数年のミステリ作家のなかでは最も当方の嗜好に合っている。なぜか、ということについては、いつか分析せねばなるまい。


内容(「BOOKデータベースより)
一党独裁の管理国家であるこの国では国家に対する反逆はもっとも罪が重く、人材育成をなにより重要視するこの国では小学校卒業時に児童の将来が決められ、非戦平和を掲げるこの国では士官学校はたんなる公務員養成所となり、経済の豊かなこの国では多くの女性が売春婦としておとずれ、文化を愛するこの国では「カワイイ」をテーマに博覧会が開かれる。そこで起こる「事件」の真の犯人は、やはりこの国自身なのかもしれない―。


著者の作品群の特徴といえば、真相解明に至るまでのロジックやディスカッションのスリリングさと、もう一つ、その少し変わった(異常とも言う)倫理観が挙げられるだろう。当方も作品によっては、その倫理観に頭の中がグニャグニャするような不思議な違和感を持つことがある。

当方たちの住む世界の住人たちがそんな違和感を持つのだったら、いっそのこと異世界を構築してしまえばいい。と著者が思ったのかどうかはわからないが、本書は我々の住む世界とは少し違う世界が舞台。当然のことながら、その世界である「この国」とは当方の住むこの国がモデルに違いない。

「この国」は上記の内容にあるように、一般的な眼で見れば異常な世界だ。でもそれって、殺人を犯したと見られる人物の顔写真を堂々と公開するマスコミや、小学校どころか幼稚園から受験が始まり格差が拡大していくこと、そしてSelf Diffenceが主な役割の軍隊を持つ我々の住む世界とどこがちがうのだろう? 我々が普通だと思っている倫理観はこんなにもあやういものだ、と著者は言っているようだ。 そんなことを今更ながら想起させられてしまった。

様式としては連作長編の姿。クールで頭脳明晰な治安警察官を主人公にSF小説を思わせるifの世界を構築しながら、なおミステリとしてのアイデンティティを強固に持つ本作は、紛れもなくお奨めの一冊だ。


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